はじめに

沿岸災害研究分野(Coastal Disaster Research Laboratory)では,海岸および海域の防災・減災を目指し,主として海岸工学,海洋物理学,気象学をベースとして,沿岸防災に関する基礎から応用に渡る学際的な研究を行っています.自然災害を研究することは,自然現象そのものを知るということになります.我々は,工学的観点から自然科学を学び,その知見を実社会へ還元するということが大事だと考えています.沿岸部の自然災害の防災・減災は,日本だけではなく,世界共通の問題であり,得られた研究成果が世界各国で利用されるような普遍的な研究を進めています.

防災研究所は,研究機関であると共に高等教育機関である京都大学に属しており,世界に羽ばたく研究者を育てることも研究室の使命の1つと考えています.

沿岸災害研究分野の位置づけ

沿岸災害研究分野は京都大学防災研究所大気・水研究グループの中で気象・水象災害研究部門に所属し,気候,気象,耐風および水文研究分野と連携して沿岸災害に関わる研究を行っています.本研究室は,1961年に始まる歴史を持つ伝統ある研究室です.これまでの研究室の変遷については研究室の歴史を御覧ください.

また研究室は,京都大学工学研究科社会基盤工学専攻の連携講座(海岸防災工学分野)として大学院の教育に関わると共に地球工学科の学部教育にも協力しています.

研究のターゲット

我が国の沿岸部は,1959年の伊勢湾台風や2011年東北地震津波など,破壊的な自然災害により大きな影響を受けてきました.津波はプレートテクトニクスで説明される海溝型地震で引き起こされ,その長期評価が非常に難しいものです.一方,高潮や高波は気候システム依存した自然現象であり,地球温暖化に伴う気候の変化は,これらの極端な自然災害の形態を変える恐れがあります.

災害のリスクは,災害の強さ,人口や資産などの被害を受ける対象(暴露),そして地域に依存する脆弱性によって評価されます.このため,地域に応じた災害の特性を正しく知ることは,災害リスク軽減に直結する研究課題となります.

このような背景を踏まえ,当研究室では以下の3つの沿岸災害に関わる現象を研究のターゲットとしています.

  • 高波 (台風や低気圧によって発生する波浪)
  • 高潮 (台風や低気圧によって発生する異常な潮位変化)
  • 津波 (海溝型地震や海底地滑り,海底火山による海面変位による長周期波)

また科学的な観点から見ると,高波や高潮は,風による運動量が大気から海面に輸送される過程と見ることが出来ます.そこで当研究室では,特に台風に着目して,大気海洋間の運動量や物質の移動に着目し以下の素過程についても研究を行っています.

  • 台風などの高風速時における大気海洋間の運動量および熱の輸送メカニズムの解明
  • 大気および海洋に及ぼす波浪の短期および長期的な影響評価とモデリング

これらの研究は,沿岸災害にとどまらず,大気海洋境界面の基本的なメカニズムを理解することであり,気候変動などの科学・工学の応用につながる興味深いテーマです.さらに,沿岸防御のための工学的な実務に関わる課題として,海浜変形や沿岸構造物に働く波力・越波に関する研究を行っています.

更に詳しい内容を知りたい方や,上記以外の研究について知りたい方は,メニューの研究紹介を参照して下さい. 現在行っている詳しい研究内容については研究プロジェクトを,最新の成果については学術論文解説記事を御覧ください.